ヘルペスの自宅治療
たかはし皮膚科クリニックの高橋幸夫です。
皮膚科医となって28年。概算で延べ1万人を超えるヘルペス患者さんの治療に携わってきました。
そんなわたしが診療中に患者さんからよく質問される、市販薬によるヘルペスの自宅治療について解説したいと思います。
自宅治療は「塗り薬」
唇の周囲や陰部、お尻などに水ぶくれや発赤を生じる皮膚病。それがヘルペスです。
ヒリヒリ感、チクチク感、痛みを伴い、人にうつしてしまう恐れもあります。
楽しみにしている旅行、大切な人との会食などが控えたときに限って、ヘルペスはあなたを悩ませます。
できれば医師の診察を受け、症状がつよい場合は「内服薬」を処方してもらうのが最も効果的な治療法です。
でも、それが難しい場合は薬局かネットで「塗り薬」を購入して使用するしかありません。
この記事を読むと、ヘルペス治療薬をスムーズに手に入れ、安全かつ効果的に使用するためのポイントが理解できると思います。
あなたの自宅でのヘルペス治療の参考になれば幸いです。
ポイント① 過去に医師の診断・治療を受けたことがあることが必要
ヘルペス治療薬は薬局で購入できますが、「過去に医師の診断・治療を受けたことがある」人に限定されます。これは購入する際に確認されます。
わたしも店頭で購入したことがありますが、特に診断書や証明書の提出は求められませんでした。
「過去に医師の診断・治療を受けたことがありますか?」
という問いに、口頭で
「はい」
と答えて、購入しました。(ここで『いいえ』と答えた方は購入することが出来ません)
ポイント② 第1類医薬品なので購入できる薬局が限られる
OTC医薬品(医師の処方箋がなくても購入できる市販薬)のなかでも、ヘルペス治療薬は「第1類医薬品」に分類されています。
そのため、OTC医薬品を取り扱う薬局・薬店で、薬剤師さんから副作用などの注意事項の説明を受けてから購入することになります。
薬剤師さんが勤務していない薬局では購入できません。
また、薬剤師さんが勤務する薬局でも、店頭に薬剤師さんがいない時間帯には購入できないので注意が必要です。
確実に購入したい場合は問い合わせをしてから買いに行く方がいいかもしれません。
ネットで購入する場合もこの手順は必要です。
メールなどオンラインで薬剤師さんに確認してもらってから商品が発送になります。
ポイント③ 「ビダラビン」または「アシクロビル」配合の薬を購入する
医療機関で処方されるヘルペス治療薬(塗り薬)は、「アラセナA軟膏(またはクリーム)」「ゾビラックス軟膏(またはクリーム)」といったところです。
実は市販薬にも同じ成分が含まれています。
アラセナA軟膏に含まれる「ビダラビン」が配合されたアラセナS軟膏、ゾビラックス軟膏に含まれる「アシクロビル」が配合されたアクチビア軟膏が販売されており、効果の面では医師から処方されたものと遜色ありません。
ポイント④ 用法容量、注意事項を守る
記事の下方に具体的な商品例のリンクを貼っておきます。
用法容量は
アラセナS(ビダラビン配合)1日1~4回、患部に適量を塗布
アクチビア軟膏(アシクロビル配合) 1日3~5回患部に適量を塗布
となっております。
個人的な見解ですが、どちらを選んでも問題ないと思います。
使用開始は、発疹が現れる前であっても、ピリピリ、チクチクなどの違和感をおぼえたら、すぐに塗布してよいとなっています。
これらは「再発性口唇ヘルペス治療薬」なので、必然的に唇とその周囲以外の部位、例えば「眼の周り」「陰部」「臀部」などには使用しないことになっています。
また、
初発(はじめて症状が現れた)場合
広範囲の場合
6歳未満
も使用できません。
ふだん医療機関でヘルペスとして診断を受け、治療していた患者さんが、たまたま受診できない場合の「代替手段」としての位置づけと考えていいでしょう。
それでも、受診できるようになるまで放置するより、医療機関で処方されるのと同じ成分の塗り薬を早めに使用するのは大変有効です。
ときどきヘルペスが生じるのだけれど、忙しくてなかなか医療機関を受診できない方は、事前にこうした市販薬を用意しておくとよいでしょう。
ポイント⑤ 早めに医療機関に行くべき場合
下記に該当する場合は、なんとか都合をつけて早めに医療機関を受診することをお勧めします。
眼の周囲や陰部のヘルペス
市販薬の適応外であることもありますが、眼のヘルペスの悪化は視力障害に至るおそれがあります。また陰部のヘルペスは痛みが強い場合も多く、性感染症としてパートナーにも広がる心配があります。
広範囲のヘルペス
カポジ水痘様発疹症と呼ばれる重症型のヘルペスの可能性があります。
当然抗ウイルス薬の全身投与(内服または点滴)が必要ですし、状況によっては入院治療が検討されることもあります。
市販薬を使用したが改善しない場合
市販薬を使用したものの改善しない場合、
ヘルペスという判断が違っている
他の病気が合併している
という可能性があります。
この場合も専門の医師の診察を受けることをお勧めします。
まとめ
- 再発性の口唇ヘルペスの市販薬(塗り薬)は有効である
- 医師による診断を受けたことがない場合は購入できない(口頭で確認)
- ビダラビン配合、もしくは、アシクロビル配合の商品を購入する
- 薬剤師さんいるOTC医薬品取り扱い薬局で購入する(ネット販売も同様)
- 改善しない場合、異常を感じた場合は出来るだけ早く医療機関を受診する
以上です。
Q&A
どちらも有効ですが、飲み薬の方がより効果的です。
ヘルペスに有効な飲み薬(抗ウイルス薬)は医師の処方箋がなければ手に入れることができません。
ステロイドには塗った部分の免疫力を低下させる作用があります。ヘルペスがさらに悪化する可能性があるので使用しないようにしてください。
ゲンタシン軟膏には細菌性の感染を抑える効果があります。ヘルペスの患部に細菌による2次感染が生じるのを防ぐ効果は期待できますが、ヘルペスウイルスを抑える効果はありません。
帯状疱疹は「水痘帯状疱疹ウイルス」が原因です。
口唇ヘルペスや陰部ヘルペスの原因となる「単純ヘルペスウイルス」とは種類が異なりますので、残念ながら帯状疱疹ワクチンでは予防できません。
睡眠不足、過労、過度な紫外線照射を避けるのが予防として有効です。
帯状疱疹の治療は抗ウイルス薬の内服か点滴が原則です。
少しでも早く医療機関を受診することをお勧めします。
一日で治すのは困難ですが、発疹が出る前のムズムズ感、ピリピリ感の段階で早期に内服薬を服用すれば比較的早く治る可能性があります。市販薬の塗り薬ではどうしても日数がかかります。早く治したい方は1時間でも早く内服薬を服用するのがおすすめです。
市販されているアラセナS軟膏、アクチビア軟膏に含まれる有効成分とその濃度は、医療機関で性器ヘルペスなどに処方されるアラセナA軟膏、ゾビラックス軟膏と同じです。
しかし第一類医薬品を安心して使用できるようルールが定められており、再発性の口唇ヘルペスに対してのみ販売が認められています。
商 品
アラセナS軟膏
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アクチビア軟膏
【 楽天で詳細を見る / amazonで詳細を見る 】
※ネット通販の場合、購入手続き後に薬剤師さんから確認メールが来ます。これに返信すると商品が発送されます。
