新米お母さんの悩み
一人目の赤ちゃん。
日々のケアを怠っていないのに、
- 首のしわ
- わきの下
- 左右のまた
- 足首のしわ
などに「赤み」や「ただれ」が生じることがあります。
「こんなとき、どうしたらいいの?」
初めての赤ちゃんを授かったお母さんにとっては、すべてがはじめての体験。
不安がつきないことでしょう。
この記事では皮膚科医歴28年のわたしが、赤ちゃんの皮膚トラブルをかかえた母さんたちからいただく疑問、質問にどうお答えしているかご紹介したいと思います。
これを読むと、
- 赤ちゃんのスキンケアの基本
- ジクジクした湿疹を見かけたときの対処法
が分かりると思います。
新米お母さんの参考になれば幸いです。
赤ちゃんの肌は繊細
当然ですが、大人にくらべて赤ちゃんの肌は繊細で敏感です。
肌は薄く、防御力も未発達なので、刺激にさらされると湿疹を作りやすく、またカビや細菌などにも感染しやすいです。
皮膚トラブルの治療においても、ステロイド外用剤による副作用が生じやすく、大人以上に慎重な対応が必要です。
赤ちゃんは不快なとき、ぐずりだして泣いたりしますが、具体的にどこがつらいか、痛いのか、痒いのか訴えることはできません。
それだけに日頃から注意深く観察し、赤ちゃんの異常に早く気が付いてあげることが大切ですし、どのようなスキンケアが適切なのか知っておくことが重要です。
【赤ちゃんの肌 ここがポイント】
- 防御力が未発達で敏感
- 細菌やカビに感染しやすい
- ステロイドで副作用が出やすい
- 何が不快なのか自分から訴えることができない
赤ちゃんのスキンケア
赤ちゃんのスキンケアの基本は「やさしく丁寧に洗う」です。
もう少し詳しく解説しましょう。
入浴の際のポイントは以下の通り
【入浴時に気を付けたいこと】
- 手で洗う
- 泡が出るポンプ式のボディーソープを使う(ネットやスポンジで泡立ててもOK)
- できれば「敏感肌用」、「赤ちゃん用」を選ぶ(特別な薬用成分は不要)
- シワ部分の汗、よだれ、食べこぼしなどのヨゴレを丁寧にやさしく洗う
- その際、ゴシゴシこすらず、泡でなでるように洗う
- シャワーなどでよく洗い流し、汚れや洗剤の成分が残らないようにする
- 柔らかいタオルでやさしく水分をふきとる
- タオルはそっと押し当てるようにして水分をふき取るようにし、ゴシゴシこすらない
- 入浴後、ローションなどの保湿剤、処方された薬をすばやく塗る
日常気をつけたいことは以下のとおり
【日常のケア】
- 汗をかいたり、食べこぼしたときは、濡れたタオルやガーゼタオルでよごれた部分をやさしくふき取る
- 赤ちゃんは肌が敏感なうえ、汗が多いので、服装、寝具、室温の設定に気を遣う
- 入浴後以外でも保湿剤を繰り返し塗る(食事前のお口のまわり、おむつ交換時のお尻など)
- 乾燥シーズンは室内の湿度にも注意を払う
- ひごろのスキンシップのなかで、肌の状態をよく観察する
最後の「よく観察する」がとくに重要です。
赤ちゃんの肌トラブルに早く気がついてあげましょう。
皮膚科での対応
わたしの外来に肌トラブルをかかえた赤ちゃんが来たときの対応を紹介します。
カビ、細菌ではないか?
症状や経過をチェックし、カンジダなどのカビの感染、雑菌の感染によるトビヒの可能性がないかなどを慎重に見極め、治療方針を決めます。
濁った浸出液が多かったり、臭いを伴うアカのようなものが付着しているときはカビや細菌の感染が疑われます。
ステロイドを上手に使う
カビ、細菌などを除外できれば、赤ちゃんのジクジク発疹の多くは「乳児湿疹」です。
弱いステロイドが早期改善には有効です。
ロコイド軟膏、キンダベート軟膏、アルメタ軟膏などが候補になります。
これらは強さが「マイルド」とよばれるランクで使いやすいお薬です。
わたしの感覚ではこれが「弱いステロイド」です。
プレドニゾロン軟膏は「ウィーク(弱い)ランク」のステロイドです。
副作用は少ないのですが、効き目が不十分なときがあります。
わたしはこのランクのステロイドをあまり使いません。
逆に症状が強い場合は、赤ちゃんの首でもリンデロンVG軟膏(ランクはストロング)を使うことがありますが、副作用に注意して極力短期間(数日)にとどめるよう心掛けています。
保護剤を活用
ジクジクしている場合、皮膚の保護剤として亜鉛華軟膏(亜鉛華単軟膏)を併用するとうまくいくことが多いです。
亜鉛華軟膏にはジクジクした肌を正常に近づける作用があります。
「マイルドランク」のステロイドを塗った上から、亜鉛華軟膏を重ね塗りするように指導しています。
湿疹の程度が軽い場合は、ステロイドを使わず亜鉛華軟膏のみとすることもあります。
定番のワセリンも有効です。
外来での対応(赤ちゃんのジクジク湿疹)
- よく観察
- 細菌、カビの感染がないかチェック
- 必要に応じて適切なランクのステロイドを選択
- 保護剤の使用もあわせて行う
すぐに皮膚科に行けない場合
皮膚科受診が難しい方は、上記の「赤ちゃんのスキンケア」のやり方を参考にして、これを実践しながら様子をみるのがいいでしょう。
ステロイドの塗り薬は市販もされていますが、自己判断で赤ちゃんの繊細な肌に使うのは、あまり推奨できません。
なぜなら、ステロイド外用剤は、
- カビや雑菌が増えて症状を悪化させる可能性がある
- シワの部分は薬の吸収が良いため、作用も副作用も強く表れる
- そもそも肌が薄い赤ちゃんの皮膚がさらに薄くなる
などのリスクがあるからです。
亜鉛華軟膏でしたら第3類医薬品として市販もされており、ステロイドの副作用はありません。
赤ちゃんの軽い皮膚炎でしたら、亜鉛華軟膏のみの処方で対応することも臨床現場ではよくあります。
ワセリン(白色ワセリン、プロペトなど)も皮膚の保護には役立ちます。
じくじくの程度が軽い場合はワセリンでも肌の保護に役立ちますし、長年の経験でもワセリンでかぶれた例は極めてまれでしたので、比較的安全に使える基礎的な医薬品と言えます。
皮膚科医、もしくは赤ちゃんの肌トラブルに詳しい小児科医に相談するのがベストですが、すぐに受診できない場合は「亜鉛化軟膏」もしくは「ワセリン」を使ってみるのは差し当たり間違いではないでしょう。
新米お母さんへの一言「慌てないで」
来院されるお母さんの中には
「皮膚科でもらったクスリを塗るとよくなるんですけど、また湿疹が出るんです!」
「この子、アレルギーですか?」
と、心配される方がいます。
もちろん、アレルギーの赤ちゃんもときにはいますし、アトピー性皮膚炎の場合もあります。
その場合は経過を慎重に見ながら長期に治療をしていく必要があります。
一方で、ごく軽症の湿疹が出たり、治ったりを繰り返す場合には
「赤ちゃんって、普通に生活していたら、これくらいの湿疹は当たり前に出ますよ」
とアドバイスします。
保湿剤だけでふだんは症状が落ち着いていて、たまに悪化したときに弱いステロイドを塗るとすぐよくなる赤ちゃんは、成長していくうちに自然と湿疹とは縁がなくなっていきます。
あせる必要はありません。
まとめ
赤ちゃんのスキンケアのポイントは以下のとおり。
- 正しい入浴法を実践する
- 日頃から保湿する
- ステロイド使用は医師と相談する
- あわてない、あせらない
あなたの育児ライフに笑顔を!
以上です。
商 品