お尻を痛がるわが子
あなたのお子さんの肛門にかゆい発疹が現れました。
手持ちのステロイドを塗ってみたけれど治らない!
近くのクリニックで「カンジダのようですね」と言われ、塗り薬が処方されました。
しかし効果はなく、今度は痛みを訴えるわが子。
「なぜ?どういうこと?」
そんなお子さんの病気は
「肛囲溶連菌性皮膚炎(こうい ようれんきんせい ひふえん)」
かもしれません。
意外と知られていない「おしりの病気」について解説します。
肛囲溶連菌性皮膚炎とは
肛囲溶連菌性皮膚炎(perianal streptococcal dermatitis:PSD)は「A群溶血性レンサ球菌(溶連菌)」が原因で生じる肛門周囲の炎症です。
溶連菌感染は、発熱、喉の腫れ、イチゴ舌、腹痛、さまざまな発疹を生じ、のちに腎機能障害にいたることがある注意すべき疾病です。
その溶連菌が肛門周囲に感染したものがPSDです。
【PSDの特長】
- 乳幼児(まれに成人)の肛門に現れるカサカサした発疹
- 色は濃い赤茶色
- ポツポツした発疹ではなく、肛門を中心に「広げた傘」のような形
- 強い痒み、ときに痛みを伴う
ステロイドの塗り薬を試しても、カンジダを抑える塗り薬を試しても治らず、症状が悪化していきます。
外見的には「オムツかぶれ」「カンジダ症(乳児寄生菌性紅斑)」と似ていて判断が難しいことがあります。
ややめずらしい病気であり、皮膚科の外来でも最初に使用した薬が無効だった場合に、それを踏まえてPSDの可能性を検討することが多いと思います。
どうやって診断する?
問診と視診からPSD(溶連菌感染)を疑うことが第一歩です。
培養検査で溶連菌が確認されれば診断の決め手になりますが、結果が出るまで日数がかるので実施されないことが多いと思います。
大抵は経験に基づき治療を進めることになるのですが、PSDを診断候補から排除しないで慎重に対応していけば、若干の回り道はあっても適切な診断にたどり着けるはずです。
【診断のポイント】
- 問診(症状の経緯、使った薬の内容を把握する)
- 視診(しっかり患部を観察する)
- PSDを疑う
- 真菌検査でカンジダ症の可能性を除外する
- 培養検査で溶連菌を確認する(対応可能なら)
治 療 は?
ペニシリン系抗生物質かセフェム系抗生物質の内服、抗生物質を含んだ軟膏の外用にて治療します。
入浴やトイレではあまり患部をこすらず、やさしく洗うよう指導します。
経験上、薬が効果を発揮すれば1週間程度で改善することが多いです。
市販薬での治療は?
治療には抗生物質が使われますが、塗り薬であれば医師の診察がなくても薬局などで入手することが可能です。

しかし溶連菌の感染はときに重症化する可能性がありますので、市販薬や手元にあった薬で対応するのはあまり賢明とは言えません。
痛みやヒリヒリ感が強いようでしたら、ワセリン等で患部を保湿、保護して少しでも早く皮膚科を受診するようにしてください。
例外があるとすれば、大型連休などでどうしても皮膚科を受診できない場合に、抗生物質配合の薬(ゲンタシン軟膏やドルマイシン軟膏など)を使用することは考えられるかもしれません。
休みが明けて皮膚科を受診する際は、受診前に使用した薬の内容(薬剤名・商品名)を医師に伝えるようにしてください。
以上です。