皮膚科に行こう

発疹のない帯状疱疹?【病院に行くべきか迷うとき】

本ページはプロモーションが含まれています

帯状疱疹? 受診を迷うとき

片方の頬から耳にかけてピリピリ、チクチクする。
でも発疹はない。
帯状疱疹かも?
どの科を受診すればいいの?
もう少し様子を見た方がいいの?

帯状疱疹の初期症状?と思われる自覚症状が出たとき、病院に行くタイミングが分からなくて困った、という話を患者さんからよくお伺いします。

発疹がない(もしくは、ほとんどない)のに、痛みや違和感があるときにどう判断すればよいか、皮膚科医の立場からアドバイスしたいと思います。

 

スポンサーリンク




 

帯状疱疹とは

水痘(みずぼうそう)の原因である水痘帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus:VZV)によって引き起こされるウイルス性の病気です。

水痘帯状疱疹ウイルス(以後VZV)は水痘を発症させた後、神経節細胞(脊椎神経および脳神経)に入り込み、DNAの形で潜伏感染します。

普段は免疫によってウイルスの活動は抑えられていますが、加齢、疾病、疲労などで免疫力が低下した際にウイルスが再活性化し、知覚神経に沿って皮膚に進出します。
皮膚の表面でウイルスはさらに増殖し赤い発疹や水疱を形成します。

症状はデルマトーム(神経支配領域)に沿った片側性(左右一方)のピリピリ感、チクチク感、違和感から始まり、数日から1週間ほど遅れて発疹が出現します。

ときに強い痛みを伴うことがあり、多くの患者さんを苦しめています。
また治癒後も痛みが長期にわたって続くことがあり、帯状疱疹後神経痛と呼ばれます。
この症状は数カ月から数年続くことがあり、患者さんのQOLを著しく低下させます。

帯状疱疹の治療の重要なポイントは、いかにして「帯状疱疹後神経痛」への進展を防ぐかにあります。

帯状疱疹の治療

VZVの増殖を抑える抗ウイルス薬の全身投与(内服)を一刻も早く開始することが重要です。

一般的には

バラシクロビル錠(500mg) 1回2錠 1日3回 7日間

ファムビル錠(250mg) 1回2錠 1日3回 7日間

アメナリーフ錠(200mg) 1回2錠 1日1回 7日間

の3剤のどれかが選択されます。(用量や日数は患者さんの状況によって変わる場合があります)
重症の場合、点滴にて抗ウイルス薬が投与されることもあります。

抗ウイルス薬はウイルスを死滅させるものではなく、増殖を抑える作用があります。
効果が現われはじめるまで3日程度かかることが多く、治療開始初期には症状の悪化が続くこともあります。

無治療でも1週間から10日で帯状疱疹はピークを過ぎますが、これは患者さんの自前の免疫力が発動したからです。
抗ウイルス薬の開始がこの時期まで遅れると投薬による効果は限定的なものになります。

皮膚科受診が遅れると、せっかく投薬を受けても後遺症が残ってしまうことがあります。
発病後の初期(できれば3日以内)に投薬を開始するのが極めて重要です。

 

発病3日以内が帯状疱疹治療のゴールデンタイム

 

 

発疹がはっきりしない「帯状疱疹?」はどうしたらいい

発疹はないのだけれど、ピリピリ感、違和感があるとき、「帯状疱疹」を疑ったとき、そうすればいいでしょうか?

結論から言います。

遠慮なく皮膚科に行ってください!

正直なところ、皮膚科の医者であっても、発疹がない段階で確実な診断を下すことは困難です。

しかし、

  • 神経症状の分布(どこがピリピリするか デルマトーム⦅神経の分布⦆に沿っているか)
  • 神経症状の出現状況(持続的か間欠的か? 動作時にでるか安静時にでるか? など)
  • 発疹の有無(皮膚科医の眼で見ると軽微な発疹が確認できることがあります)
  • その他の所見

などをもとに、帯状疱疹の可能性があるのか、他の病気の可能性が高いのかを検討してくれると思います。

 

そのうえで、患者さんの症状、年齢、基礎疾患、体調などを総合的に勘案して

  • 経過観察(後日の再受診を指示)
  • 対症療法(鎮痛剤など)
  • 他の診療科(耳鼻科、脳外科、整形外科、神経内科など)への紹介
  • 抗ウイルス薬の投与

など、方針を決めることになると思います。

後遺症で苦しまないためにも、先送りせず皮膚科を受診することをお勧めします。

 

帯状疱疹はデルマトームに沿って帯状に発疹が分布します

確定診断できないとき、わたしはこうする【個人的意見】

医師としての個人的な意見になりますが、わたしは帯状疱疹の診断が確定的でなくても総合的に考えて妥当だと判断した場合は、抗ウイルス薬の投与に踏み切るようにしています。(これは医師によって判断が分かれるかもしれません)
そのうえで、しっかり通院してもらい経過を観察していきます。
後日、抗ウイルス薬が必要ないと判断した場合は、柔軟に治療方針を変更します。
そのためには、患者さんとの十分なコミュニケーションが前提となると思います。

 

スポンサーリンク




 

こんな症状の場合は帯状疱疹の可能性が低い

症状が両側性

帯状疱疹は両側性(左右両方)に出現することは大変まれで、通常は神経の走行(デルマトーム)に沿って片側性(左右どちらか)に帯状に分布します。
帯状疱疹の初期で、ピリピリ感、ヒリヒリ感のみの段階でも、左右一方だけに自覚症状が現れます。

「両頬がチクチクする」「背中全体が痛い」「両下肢がジンジンする」という場合、帯状疱疹の可能性はかなり低いと言えます。

姿勢を変えたり、強い力が加わるとズキンと痛む

ヘルニアなどで神経が圧迫を受けると痛みが生じる場合があります。

安静時には症状がないのに、動作時に腰や下肢に痛みが生じる場合、最初に受診すべきなのは整形外科かもしれません。

自覚症状が何カ月も続いている

帯状疱疹は無治療でも3~4週間で沈静化します。
何ヵ月もチクチク感、違和感が続く場合は帯状疱疹の可能性は低いと言えます。

ただし、帯状疱疹の後遺症の神経痛は数ヵ月継続することがあります。
症状出現当時、帯状疱疹と思われる発疹があったのであれば、帯状疱疹後神経痛の可能性があります。
鎮痛剤などによる治療、ペインクリニックへの紹介が必要となるかもしれません。

また、無疹性帯状疱疹(zoster sine herpete;ZSH)と呼ばれる、発疹を伴わない帯状疱疹の後遺症の可能性もあります。(ZSHについては後ほど触れます)

 

もともとヘルペス(単純疱疹)の既往がある

再発性のヘルペスの場合、発疹があらわれる何日かまえからピリピリ感、ムズムズ感が生じることがあります。
過去にヘルペスが生じた部位にこうした自覚症状が現れた場合、ヘルペス(単純疱疹)の初期の可能性があります。

かかりつけの皮膚科を受診すれば、抗ウイルス剤(単純ヘルペスウイルスに対して)を処方してくれるかもしれません。

スポンサーリンク




 

顔、耳に自覚症状があるとき

顔や耳に帯状疱疹があらわれたとき、もしくは帯状疱疹の可能性のある神経症状(ピリピリ感、痛み)があらわれたとき、気をつけなければならないのがハント症候群(Ramsay Hunt症候群)です。

ハント症候群(Ramsay Hunt症候群)

顔や耳(三叉神経、内耳神経の支配領域)に帯状疱疹が生じた結果、神経が障害を受けて、①顔面神経麻痺、②耳鳴り、③眩暈 などを生じる病気です。

【ハント症候群のおもな症状】

  • 顔の表情がこわばる
  • 口角が下がり、口から飲み物や唾液がこぼれてしまう
  • 味覚障害
  • 耳鳴り
  • 眩暈(めまい)
  • 難聴

主に耳鼻咽喉科に治療をお願いするのですが、治療開始が遅れれば遅れるほど治癒率が低くなり、長期間症状に苦しむ患者さんがおられるようです。

激しい痛みに悩まされる疱疹後神経痛とならんで、ハント症候群は帯状疱疹にともなう重要な合併症(後遺症)です。

 

顔面神経麻痺
眩暈(めまい)
耳鳴(みみなり)

 

無疹性帯状疱疹とハント症候群

無疹性帯状疱疹(zoster sine herpete;ZSH)と呼ばれる「発疹があらわれない帯状疱疹」があります。

ハント症候群の一部はZSHによるものがあるとされ、診断と治療のタイミングが遅くなることで症状が長期化する可能性があります。

早期の治療開始が必要な一方で、発疹を伴わないため皮膚所見からは診断が困難です。
ペア血清による血液検査(後ほど述べます)は結果報告に日数がかかるため、初期の治療方針の決定にはあまり役に立たないと思われます。

結局、患者さんの状況(症状の強さ、年齢、基礎疾患など)から判断し、最善と思われる対応をするしかないと思います。(早期に抗ウイルス薬の投与に踏み切りつつ、耳鼻科等への紹介を検討する など)

 

聴神経(内耳神経)は聴覚と平衡感覚に関わる神経です

 

 

スポンサーリンク




 

検査について

帯状疱疹の診断は特徴的な発疹の分布、痛みなどの自覚症状から臨床的に判断されるのが一般的です。

必要に応じて臨床検査を行い、診断の参考にします。

Tzanckテスト

水疱を破り、浸出液を拭って染色、顕微鏡でウイルス性巨細胞を確認します。

蛍光抗体法

水疱から検体を採取。モノクローナル抗体でウイルス抗原を検出します。

血清診断

採血しVZV-IgG値(ELISA法)を調べる。有意に上昇していれば帯状疱疹の可能性が高いと判断できますが、ペア血清(2~4週間後の結果と併せて判断)でなければ評価が難しい可能性があります。

 

まとめ

ピリピリ感、チクチク感があるものの、発疹が出ていない「帯状疱疹のような症状」があるときどうしたらよいかまとめました。

お近くの皮膚科を受診し、よく相談し、あなたにあった適切な治療を受けてください。

治療開始後に症状や体調の変化に気がついたときは、予定を早めて再受診してもよいと思います。

後遺症を避けるためにも、

「迷ったらすぐ受診」

をお勧めします。

 

帯状疱疹で失敗しないために「してはいけないこと7選」帯状疱疹で後悔したくない 帯状疱疹は体の左右どちらか一方に痛みをともなう発赤・水疱が生じるウイルス性の皮膚病です。 ときに激しい痛み...
シングリックスは高い?【帯状疱疹ワクチンの決定版を徹底解説】帯状疱疹ワクチンのCM 最近テレビやネットなどのメディアで帯状疱疹ワクチンの啓発コマーシャルを見かけるようになりました。 診療中...

 

スポンサーリンク