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【円形脱毛症】まずは『知ること』が不安を乗り越える第一歩

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髪の毛の一部が突然抜け落ちて脱毛班(いわいるハゲ)が生じる円形脱毛症。

これに気がついた人は、驚き、不安になるでしょう。

まずは病気の正体を知ることが、不安を乗り越える第一歩です。

この記事では、

  • 円形脱毛症とはなにか
  • どんな治療があるのか

を分かりやすく解説します。

 

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そもそも円形脱毛症とは?

円形脱毛症は「自己免疫異常」によって毛髪が抜ける病気

円形脱毛症は自己免疫異常が原因と考えられており、突然毛髪が抜け落ち、脱毛班を生じる病気です。

自己免疫異常とは、本来外敵や異物を排除する免疫の仕組みが、毛髪という自分自身の一部を誤って攻撃するエラーが生じてしまった状態のことです。

その結果、2,3センチくらいの大きさの境界明瞭(境目がくっきりしている)な脱毛班(毛のない地肌)が急に出現します。

こうした自己免疫異常が生じる仕組みは詳しくは分かっていません。

ストレスとの関連もはっきりしておらず、「円形脱毛症=ストレスのせい」と言い切ることはできません。

アトピー性皮膚炎と合併する割合がやや高く、また家族内で発生することもあります。

遺伝的体質を背景に、なんらかのきっかけで自己免疫障害が生じ、発症するものと考えられます。

 

円形脱毛症のタイプ

円形脱毛症のタイプ分類を解説します。

単発型

頭に数センチの脱毛班が一つ。

多発型

頭に脱毛班が複数個存在する状態。

全頭型

頭髪がほとんど抜けてしまった状態。

汎発型

脱毛が進み、髪の毛も含む全身の毛(まつ毛、眉毛、ひげ、腋毛、陰毛など)が抜けた状態。

蛇行型

後頭部、側頭部の生え際が帯状に脱毛する。

 

 

円形脱毛症の重症度

重症度についても解説します。

軽症

  • 単発型
  • 多発型のうち頭部全体の25%未満の脱毛

重症

  • 多発型のうち頭部全体の25%以上の脱毛
  • 全頭型
  • 汎発型
  • 蛇行型

重症になると外見的に周囲の視線が気になる上、軽症に比べ改善が難しくなります。

頭部全体の25%以上の脱毛となると、治療と並行してウィッグなどでカバーすることも検討されます。

 

 

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円形脱毛症の何が問題か?【見た目以外は問題はない。だが…】

基本的には外見だけの問題です。

現代社会で髪の毛がないことは、生物として生きていくうえで特に支障はないと思われます。

肉体的痛みはありませんし、生命予後が悪くなる(寿命が短くなる)こともありません。

頭皮が日焼けしやすい、頭をぶつけたときにケガをしやすい、といったことは少しあるかもしれません。

問題は、髪の毛がない(少ない)ことで周囲から奇異の目で見られる社会的ストレスです。

「人を外見で判断してはいけない」

と言われます。

しかし「外見」は、わたしたちが社会で生きていくうえで重要な要素です。

「自分が何者であるか?」

「周囲からどう見られているのか?」

というのは、アイデンティティーの根幹です。

特に子どもが円形脱毛症になった場合、周囲からの視線や何気ない言葉、それに伴うストレスが、心の健全な成長にとって障害になることがあります。

「見た目の問題だからこそ、大問題である」と理解すべきです。

 

脱毛=円脱(円形脱毛症)とは限らない

円形脱毛症以外にも毛髪の脱毛を生じる病気があります。

診断は、

  • 問診
  • ダーモスコピーによる診察
  • 血液検査(必要な場合)

などを通じて行います。

後天性(生まれながらではない)脱毛には、円形脱毛症以外に、

  • 抜毛症(抜毛癖、トリコチロマニア)
  • 男性型脱毛症
  • 休止期脱毛
  • 頭部白癬による脱毛
  • 梅毒による脱毛
  • 膠原病による脱毛
  • 内分泌異常による脱毛
  • 瘢痕性脱毛

などがあります。

ただしい診断を下したうえで治療のステップに進むことが重要です。

 

 

 

円形脱毛症の治療戦略は「重症度」によって異なる

円形脱毛症の治療手段は重症度や患者さんの状況を踏まえて総合的に判断します。

軽症の場合の治療戦略

用法・用量は、症状により、医師により異なることがあります。

ステロイド外用

発症初期の場合はステロイド外用剤を試します。

治療例:アンテベートクリームを1日2回患部に塗布

 

セファランチン内服

抗アレルギー作用、血流促進作用があり円形脱毛症治療に使われます。

治療例:セファランチン錠(1mg)3錠 分3 食後

 

グリチロン内服

甘草(カンゾウ)に由来するグリチルリチン(グリチロン)には抗アレルギー作用があるとされ、日本で多く使われてきました。

治療例:グリチロン 6錠 分3 食後

 

抗アレルギー剤内服

抗アレルギー剤(抗ヒスタミン剤)の内服が有効との報告があります。

治療例:エバステル(10mg)1錠 分1 就寝前 (※保険適応なし)

 

フロジン液(塩化カルプロニウム液)外用

血管拡張作用があり円形脱毛症に有効とされます。

治療例:フロジン液 1日2回塗布

 

経過観察という選択肢

軽症の場合、多くは数カ月の経過で自然治癒するとされています。

一方で治療薬の効果は比較的マイルドで、効果が実感しにくい場合もあります。

軽症であり、ヘアスタイルの工夫などでカバーできる場合は、積極的な治療を行わず経過観察とするのも選択肢のひとつです。

 

 

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重症の場合の治療戦略

重症の場合、副作用に配慮しながらさらに強力な治療法を考慮します。

冷凍療法

液体窒素を用いた冷凍治療

液体窒素(-196度)を綿棒にしみ込ませ、頭皮に押し当てます。

しみるような痛みを感じますので、患部があまりに広いと難しい場合があります。

 

ステロイド内服

ステロイド(副腎皮質ホルモン)を服用する治療法です。

重症かつ進行性の場合は考慮してよい治療法ですが、ムーンフェイス(顔がむくみを生じ丸くなる)、血圧上昇、血糖値上昇などの全身の副作用が起こりえます。

また、投薬休止後の円形脱毛症の再発が比較的高い頻度で起こります。

 

ステロイドパルス療法(点滴)

入院の上、大量のステロイドを点滴する治療法です。

重症であり、進行性の場合に検討されますが、内服のステロイドと同様に副作用のリスクがある治療法です。

 

局所免疫療法(SADBE、DPCP)

  • squaric acid dibutylester(SADBE)
  • diphenylcyclopropenone(DPCP)

といった化学物質(試薬)を用いる治療法です。

これらの物質を脱毛部位に塗って「感作」させ(わざとアレルギー反応を起こさせるようにする)、その後薄めた試薬を定期的に患部に塗布する治療です。

「日本皮膚科学会円形脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」で推奨度「B」と評価される治療法ですが、ときに強い皮膚炎を起こすことがあります。

 

ステロイド局所注射

適切な濃度に調整したステロイドを患部に注射する治療法です。

ガイドライン(上記)でも推奨度「B」とされ有効性の高い治療法とされています。

 

15歳以下の場合の注意事項

安全性などの観点から、15歳以下の小児には

  • ステロイド内服
  • ステロイドパルス療法
  • ステロイド局所注射

は基本的には行わないことになっています。

 

 

まとめ

円形脱毛症は自己免疫異常によって毛髪が抜ける病気です。

外見を除いて大きな障害はありませんが、社会的なストレスが問題になります。

軽症の場合は自然治癒もありますが、重症になると治りにくく、治療も困難になります。

皮膚科など、専門の医療機関での治療が必要です。

 

補足:たかはし皮膚科クリニックでの治療内容

わたしの勤務する「たかはし皮膚科クリニック」では、

  • ステロイド外用
  • フロジン液外用
  • セファランチン内服
  • グリチロン内服

による治療を行っています。

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