ある日、あなたは足の
水ぶくれ かわむけ かゆみ
に気づきました。
- うわ、水虫かも?
- どこでうつされたかなあ?
- とりあえず明日ドラッグストアで水虫薬買わなきゃ!
でも、「とりあえずドラッグストアに行く」のはやめてください。
それは大きな遠回りになる可能性があります。
その理由とあなたがすべきことをお伝えします。
理由その1
本当に水虫?
気温が上がり湿気が多い夏場は、水虫の原因である「白癬菌」が増殖しやすく、水虫の症状が悪化する季節です。
毎年この時期、足のかゆみなどを訴えて来る水虫患者さんを大勢治療しています。
そうした本当の水虫患者さんに交じって、
「自分は水虫です」
とおっしゃる「水虫ではない」患者さんが一定数来院されます。
そうした「自称水虫患者」とよばれる方の多くは、夏場の汗やレジャー活動による刺激で、湿疹を生じている場合が多いようです。
本当に水虫かどうかは、顕微鏡等を用いた検査で確認しなければ、確実なことは分かりません。
湿疹に対して水虫薬を使っても改善は期待できませんし、運が悪いと水虫薬による「かぶれ」を生じてしまうこともあります。
皮膚科で検査による正確な診断を受けることが問題解決の第一歩なのです。
理由その2
合併症の問題
「自分は水虫」との自己診断が正しい場合でも、合併症と呼ばれる「水虫以外の病気」が同時に起きていることがあります。
水虫が足のゆびの間に生じた場合、ときにジクジクしてただれた状態になることがあります。
そこに雑菌などによって2次感染を生じ、蜂窩織炎と呼ばれる症状の重い感染症につながることがあります。
その場合、水虫の治療と同時に(あるいは先行して)、抗生物質を用いた治療が必要になります。
特に糖尿病をお持ちの患者さんは悪化するリスクが高いので、初期に適切な対処を行うことが重要です。
理由その3
治療にはコツがある
ドラッグストアでも薬を購入する際に店員さんから説明、指導があるかもしれません。
しかし治療上のポイントを細かくお伝えし、いつまで治療を継続すべきか判断するのは皮膚科医院の仕事です。
どの範囲に薬を塗るべきか、いつまで治療を続けるべきか、どんな症状が現れたら相談に行くべきか、など正しく治療し、「完治」を実現するにはコツがあるのです。
理由その4
皮膚科で指導を受け「我が家の水虫問題」を解決する
- 家族や身の回りの人に水虫をうつさないようにするにはどうすればいいか
- 洗濯物をどう取り扱うか
- シューズの処置
- 足の洗い方
治療薬を処方する以外にも、ご家庭から水虫を駆逐するために知っておくべきことはいろいろあります。
そうした知識を身に着けることも重要です。
理由その5
結果的には安上がり
市販の水虫薬にも優れたものがあります。
成分的には医療機関で処方されるものと同じものが販売されていますし、実際正しく使用すれば完治も期待できます。
しかし、健康保険が適応される皮膚科で治療した方が、治療費全体としては安く済みますし、遠回りせず完治を実現できる可能性が高いと考えます。
理由その6
はじめに市販薬を使うと「診断不能」になる
市販の水虫薬をしばらく使用したのちに来院されると、診断が困難になることがあります。
要するに検査しても水虫菌(白癬菌)が見つからないことが多いのです。
この場合、以下の3つの可能性があります。
- そもそも水虫ではない
- 水虫だったが既に治癒した
- いまも水虫なのだが、薬で菌が減っていて確認できない
このどれなのか確定することが困難です。
そんなときは遠回りのようですが、一定期間(半月とか1カ月)水虫薬を使用せずに様子を見て後日再検査を行う、という対応になることがあります。
「できれば市販薬を使う前に検査を受けてほしい」
多くの皮膚科医の本音だと思います。
まとめ
市販の水虫薬を使う前に皮膚科を受診した方がいい理由は以下の通りです。
- 正確な診断が重要
- 他の病気が合併していることがある
- 治療にはコツがある
- 「我が家」から水虫を駆逐する作戦を立てる必要がある
- 結局は安い
- はじめに市販薬を使うと診断不能になる
忙しい毎日のなかで皮膚科にかかる時間を確保するのは大変かもしれませんが、ドラッグストアと比べてこれだけのメリットがあります。
「水虫かも?」と思ったら、まずは皮膚科受診です。
