帯状疱疹で後悔したくない
帯状疱疹は体の左右どちらか一方に痛みをともなう発赤・水疱が生じるウイルス性の皮膚病です。
ときに激しい痛みに襲われ、眠れなくなることがあります。
ウイルスが沈静化したあとも、つらい神経痛で長期間苦しむ人もいます。
生活の質(QOL:Quality of life)を著しく損なう恐れのある帯状疱疹は、発病初期の段階で治療を開始することが重要です。
帯状疱疹になったときに、あとで「失敗した!」と思わなくてすむようにする7つのポイントをまとめました。
そもそも帯状疱疹とは
帯状疱疹は水痘帯状疱疹ウイルスが原因です。
通常は幼少児に感染し、水痘(みずぼうそう)として発症します。
治癒すると終生免疫を獲得し、二度と水痘になることはありませんが、水痘ウイルスは神経節細胞に入り込み、潜伏感染の状態になります。
疲労や寝不足、疾病などで免疫力が低下した際にウイルスは再活性化し、神経に沿って活動を開始します。
通常、痛みや違和感が先行し、つづいて発赤、水疱が形成されます。
放置しても3~4週間で症状は沈静化しますが、神経痛や瘢痕、色素沈着が残ることがあります。
発症しやすいのは体幹、四肢ですが、顔や頚部、陰部やお尻にも生じることがあります。
特に顔(三叉神経領域)に生じた場合、激しい疼痛に苦しむことがあるほか、顔面神経麻痺、眩暈(めまい)や耳鳴りの症状を伴うことがあります。
後遺症は数カ月の経過のなかで徐々に軽くなりますが、なかには長期間神経痛や顔面神経麻痺に苦しむ方もいます。
帯状疱疹になったとき、してはいけないこと
①病院にかかるのが遅れる
帯状疱疹治療の最大のポイントは
「少しでも早く、抗ウイルス剤の全身投与を開始する」
ことです。
全身投与とは「飲み薬」を服用するか、「点滴」による治療をうけることです。
抗ウイルス剤は水痘帯状疱疹ウイルスを消滅させる薬ではなく、ウイルスの増殖を抑えるものです。
投与して3日目ころから効果を発揮するとされるので、治療を開始しても数日は悪化傾向がみられることがあります。
そうしたタイムラグがあることを考慮すると、発症して3日以内の早い段階で治療を開始することが重要です。
よって、
「帯状疱疹みないな症状だけれど、もう少し様子を見よう。発疹がもっと増えたら病院に行こう」
という考えは失敗のもとです。
ピリピリ、チクチクする症状があり、赤い発疹が少しでも現れたら、1日でも早く医療機関に行くことをお勧めします。
②市販薬で何とかしようとする
帯状疱疹に対して十分な効果が期待できる市販薬はありません。
単純ヘルペスに使われる抗ウイルス薬の塗り薬にアラセナS軟膏、アクチビア軟膏などがあります。
これらには水痘帯状疱疹ウイルスにも有効な成分が配合されていますが、皮膚表面からの外用では効果は極めて限定的です。
ドルマイシン軟膏など抗生物質を含んだ軟膏は、帯状疱疹の患部に雑菌などが2次感染を起こすことを防ぐ効果は期待できますが、ウイルスを抑える効果は期待できません。
湿疹に対して有効なステロイドの外用剤は、皮膚表面の免疫力を低下させる可能性があり、むしろ有害となる場合があります。
水疱が破れた場合に限り、2次感染を予防するためにドルマイシン軟膏など抗生物質を含んだ軟膏を塗ることは意味があると思われます。
痛みを抑えるため市販の鎮痛剤を服用するのは問題ありませんが、帯状疱疹そのものを治す効果はありません。
③寝不足、過労、ストレスを放置する
帯状疱疹は水痘帯状疱疹ウイルスに対する免疫力が低下した際に発症しやすいと考えられます。
発症したあとも寝不足、過労、ストレスなどで免疫力が低下しつづける状態を放置すれば、回復も遅くなります。
適切な治療を受けつつ、寝不足や過労を避け、休息や休養を取ることが重要です。
どうしても仕事が休めない場合も、周囲に事情を理解してもらい、負担を減らしてもらえるよう相談しましょう。
④患部の水疱をつぶす
たまに水疱をつぶしたり破った方が病原体が早くいなくなると考える方がいますが、メリットはありません。
むしろ破ったキズから雑菌などが侵入して2次感染を起こすおそれがあるほか、治療後の傷跡が目立ってしまう可能性もあります。
⑤患部を冷やす
打撲や捻挫などの場合は患部を冷やすことが有効なことがありますが、帯状疱疹においてはかえって痛みが増すことがあります。
痛みに対しては鎮痛剤を服用し、患部は冷やさないようにしましょう。
⑥小さな子どもと触れ合う
帯状疱疹の発疹表面からは水痘帯状疱疹ウイルスが排出されています。
みずぼうそうに罹患したことのない小さな子どもと触れ合うとウイルスに感染させてしまう恐れがあります。
まれに成人でも水ぼうそうになったことがない人もいますので、人との接触全般について気をつけるようにしましょう。
水痘ワクチンを接種済の人に対しても、感染させてしまうリスクはありますので注意が必要です。
一方、過去にみずぼうそうの感染歴が確実にある人については、極端な対策は必要はありません。
⑦痛みや不調をがまんする
帯状疱疹の経過は千差万別です。
はじめに軽症の帯状疱疹と判断した患者さんが、予想以上に悪化することがあります。
また合併症があらわれて対応が必要になることもあります。
帯状疱疹で起こりうる症状の変化、合併症
- 疼痛の悪化
- 顔面神経麻痺
- 眩暈(めまい)、耳鳴(みみなり)
- 患部のただれに生じた細菌感染
- ウイルス血症による発疹の全身への拡大(汎発化)
- 肺炎、髄膜炎
- 投薬による副作用(薬疹、頭痛、胃もたれなど)
医療機関で治療を受けていても、症状や体調の変化を感じたら早めに再受診をするようオススメします。
特に痛みが激しく飲み薬で対処できないときは、ペインクリニックを紹介しブロック注射を行ってもらうと激痛が緩和できることがあります。
帯状疱疹後に激しい神経痛が残らないよう、ブロック注射は早い段階で踏み切った方がよいとされます。
まとめ
帯状疱疹で失敗しないために「してはいけないこと7選」をまとめました。
- 病院にかかるのが遅れる
- 市販薬で何とかしようとする
- 寝不足、過労、ストレスを放置する
- 患部の水疱をつぶす
- 患部を冷やす
- 小さな子どもと触れ合う
- 痛みや不調をがまんする