Q.血縁者の男性にAGAの人がいますか?
これが治療を始めるかどうかを判断するうえで重要な質問です。
AGAと遺伝の間には強い関連があることが分かっており、血縁者の男性にAGAの方がいる方はAGAとなる率が高く、逆に血縁者にAGAの方が全くいない方がAGAの症状が進む可能性は大きくはありません。
当院には20代の方もAGAの相談で来られますが、なかには症状が軽く薄毛と認識しにくい方もいます。
そんな方でも、数年前よりは徐々に毛量が減少しており、血縁者に複数AGAの方がいる場合は、十分な説明のうえでAGAの治療を開始することがあります。
他方、シャンプーの際の抜け毛が数週間前から増えたことを気にして、AGA治療薬を希望して来られる方がいます。
詳細に観察してみても髪の毛全体のボリュームは減っておらず、親族にもAGAの人はいないとのこと。
こうした方は、疲労や食生活の乱れなどから一時的に脱毛が増えている状況が考えられ、説明の上しばらく経過観察しても薄毛の症状の進行が見られない場合があります。
それでも初期のAGAを正確に判断するのは難しい場合があり、その際に参考になるのが、血縁者にAGAの人がいるかどうかの情報です。
父親、兄弟、親戚のおじさんなどの状況を思い浮かべることが出来れば、自分の将来がおぼろげながらに見えてくるのかもしれません。
パレートの法則(2割8割の法則)
「パレートの法則」「2割8割の法則」というのを聞いたことがあるでしょうか?
「2割の営業マンが、会社の売り上げの8割を稼いでいる」
など、
「コアとなる一部(全体の2割)が結果の大半(8割)を左右する」
というものです。
わたしはAGAにもこの法則が成り立つと考えています。
AGAの原因として、遺伝、年齢、食生活、喫煙、ストレス、睡眠などがありますが、最大の要因は遺伝です。
端的に言えば、
「AGAはほとんど遺伝で決まる」
ということです。
遺伝の影響が大きい以上、対策のコアになるのはAGAのメカニズムに働きかける合理的な治療法です。
日本皮膚科学会の「AGA治療ガイドライン」では
- 5α還元酵素阻害剤内服
- ミノキシジル外用
が推奨度A(行うよう強く勧める)とされ、これらが治療の中心的役割を担うと期待されています。
こうした考えから、わたしの医院では「5α還元酵素阻害剤」をAGAの方に積極的に処方しています。(自費診療)
生活習慣はどのくらい重要?
では生活習慣は重要視しなくてよいのか?という疑問が生じると思います。
過労死が心配されるレベルの過酷な勤務環境とか、極端な偏食や無理なダイエットで急激に体重が減っているような場合は毛髪にも影響があると思われます。
それより軽い負荷や、健康的なダイエットであれば、AGAへの影響は限定的と考えます。
生活習慣の改善は健康で幸福な人生のためには非常に重要ですし、強く推奨します。
バランスの良い食事を心がけ、適度な運動をする。
ぜひ多くの若者にも実践してもらいたいです。
しかし、AGAの改善のために高額なサプリメントやヘアケア用品、頭皮マッサージなどに高額な出費をするのは慎重に考えて欲しいと思います。
若い世代の方には、現在と将来のためにお金は大切に使って欲しいと思います。
早めの治療開始がのぞましい?
AGA治療は、早めに始めた方が効果的ではあります。
しかし、5α還元酵素阻害剤などによる治療は、継続している間のみ効果が持続する性質のものです。
治療を終了すると、徐々に効果が失われます。
費用対効果的も考えた適切なタイミングで治療を開始したいところです。
それに若い世代の方は、AGA治療を受けて毛髪の状況を改善することが「自分の人生に価値があるか」という根本的な部分をしっかり考えて欲しいと思います。
若いうちは美意識も高く、外見も気になります。
人生における重要な出会いや転機もあるでしょう。
一方で経済的に十分に自立できていない場合もあるでしょう。
若いうちの治療開始を否定するつもりはありませんが、
「これだ!」
と飛びつく前に、最低でも1カ月はじっくり考えて欲しいと思います。
それくらい時間をかけても大勢に影響はありません。
「まだAGA治療はしなくていいよ」とアドバイスするとき
医学的にAGAであり、治療の効果やリスクを正しく理解された患者さんが望めば、わたしは5α還元酵素阻害剤を処方しております。
それでも、若い世代の方には「君はまだAGA治療はしなくていいよ」ということを暗に伝えることがあります。
AGAのごく初期のため、早すぎて治療費がもったいない。
もう少し症状がはっきりしてからでも間に合う。
という場合。
軽度のAGAではあるが、この患者さんの悩みの本質はすこし違うところにあるようだ。
もう少し、気持ちや頭の中を整理してからの方がよいのでは?
と考える場合。
軽度のAGAに加え、無理なダイエットなど別の理由で生じたの脱毛が混在しており、状況をほぐさないと、混乱してしまいそうだ。
という患者さんの場合。
などです。
わたしの価値観を押し付けるつもりはありませんが、率直な意見を求められれば、できるだけ率直に答えたいと思っています。
まとめ
AGAの相談で来る若い世代の方は、初期段階のことも多く、診断や今後の症状の進展の予想が難しいことがある。
その際に参考になるのが「血縁者にAGAの人がいるか?」という質問。
AGAは遺伝で決まる部分が大きい。効果が不確かな高額なサプリやサービスには気をつけて欲しい。
本当にAGA治療が必要か、自分の価値観と照らし合わせて慎重に判断して欲しい。
以上です。
補足
たかはし皮膚科クリニックではAGA治療の内服薬を自費治療で処方していますが、満20歳以上の方に限定しております。
20歳未満の方でも、AGAなのか、それ以外の脱毛なのかの診察は行っております。
処方なしの診察のみならば、健康保険で対応可能です。