子どもの手と足、口の中にポツポツが…
なんとなく子どもの機嫌が悪い。
口内炎が出来て痛がっていると思ったら、翌日には手のひら、足の裏に数ミリ大の水疱がいくつもあらわれて…。
これらは手足口病というウイルス性の病気の特徴です
初夏に流行しやすく、ウイルスの型によっては治癒後に手足の爪の脱落が生じたりします。
保護者としてはいつまで幼稚園、保育園を休ませるべきか悩ましいところです。
手足口病のポイント、注意点を解説します。
手足口病とは
手足口病(Hand-foot-mouth disease)は手のひら、足の裏、口の中に発赤や水疱を生じるウイルス性の皮膚病です。
原 因
コクサッキーA-6、A-10、A-16、エンテロウイルス71など複数のウイルスが原因となります。
感染経路
感染経路は飛沫感染、便の中に含まれるウイルスが不十分な手洗いなどによってうつる経口感染(糞口感染)などが考えられます。
経 過
感染後、ウイルスは腸管で増殖し血流に乗っていろいろな臓器に運ばれます。
潜伏期間は3~5日。
患者の一部に発熱、風邪様症状が生じます。
口の中に発赤、水疱、びらん(ただれ)、アフタを生じ、痛みから経口摂取が困難になることがあり、脱水に注意が必要です。
口の症状に続いて、四肢に発疹が生じます。
手のひら、足の裏に米粒大の楕円形の水疱が生じ、周辺に発赤を伴います。
楕円の長軸(長い方の軸)は指紋の流れと一致します。
肘頭(ひじの外側)、膝蓋(膝の前面)、お尻、足首にも赤い斑点状の発疹が生じることがあります。
多形紅斑と呼ばれる炎症性の皮膚病と似ていることがあり、判別に注意が必要です。
1週間から10日で症状は改善します。
注意すべき症状
髄膜炎・脳炎
エンテロウイルス71(EV71)が原因の場合、脳炎、髄膜炎を起こすことがあり、死亡例も報告されています。
小児患者の場合、よく状態を観察し、高熱、頭痛、嘔吐、意識障害、けいれんなどがあれば速やかに医療機関を受診するようにしましょう。
爪の変形・脱落
コクサッキーA6が原因の場合、治癒後に爪の変形、脱落が生じることがあります。
手足の爪母(爪をつくる組織)の細胞や周囲の組織が感染によりダメージを受け、一時的に健常な爪がつくられなくなります。
変形を生じた爪が伸びてきて、爪が脱落するのは、解熱後数週間から1カ月後くらいでしょうか(わたしの診療経験上)。
患児によっては手足20本すべての爪に異常が現れることがあり、保護者の方が驚いて連れて来るケースがあります。
時間とともに正常な爪に置き換わるので慌てる必要はありません。
爪がひっかからないよう適度に爪を切り整え、ヤスリでとがった部分を滑らかにするなどしましょう。
必要に応じて絆創膏などで保護し、不意に爪が引っ掛かってケガをしないように配慮しましょう。

治 療
手足口病のウイルスを抑える薬はありません。
また特別な治療を行わなくても自然に回復します。
よって基本は対症療法です。
水分補給に注意し、小児の場合は痙攣(けいれん)など神経の障害がないかよく観察しましょう。
熱が高ければ解熱剤、水疱が破れてジクジクするようならゲンタシン軟膏など抗生物質を含んだ軟膏を2次感染防止のために塗ります。
感染対策
感染力はいつまでつづくか
咽頭(喉)からは1~2週間、便からは3~5週間ウイルスの排出があるとされます。
いつまで登園を控えるべきか?
明確な規定はありません。
教本によっては「本人の体調さえ回復すれば、感染対策を理由に休ませる必要はない」と記載されているものもあります。
わたしは患者の体調回復のためと飛沫感染のリスクを考慮して、発症して1週間程度は自宅で安静にするよう指導しています。
どうしても自宅で対応が難しい場合は、幼稚園・保育園に事情を説明し、対応可能なら一定の配慮のもと登園させてもらえるか相談するようお話します。
風邪をひいたときと同じ考え方です。
1週間を過ぎれば飛沫による感染力はある程度低下します。
便中には1カ月以上ウイルスが排出されますので、トイレの手洗いなどに注意するよう指導したうえで、登園、登校は問題ないと説明します。
外出は可能?
プールや体操教室など他の子どもと接触する可能性のある習い事などは、幼稚園や学校と同じ考え方になると思います。(1週間程度休む)
どうしても家で一人にできない状況で、本人に発熱や脱水などの問題がない場合、スーパーの買い出しなどに短時間同行するのはやむを得ないことだと思います。
もちろん、手洗い、マスクを怠らず、商品等に触れさせないなどの配慮をしてください。
これも風邪のときと同じ考え方です。
兄弟は登園、登校してよい?
家族に手足口病の人がいても本人に症状がなければ登園、登校は問題ありません。
ただ家族間の感染は非常に多く、3~5日の潜伏期間を経て発症することは十分考えられますので、同居している家族の健康状態に注意しましょう。
大人も感染しますか?
子どもに多く感染する病気ですが、大人もかかる可能性があります。
前の週に手足口病の子どもを連れてきたお母さんが、その子の兄弟とお母さん自身が発症して来院して例があります。
対応は対症療法です。
大人は幼小児と違い感染対策を実行しやすいので、体調に大きな問題がなければ出勤を制限する指導はしていません。
デスクワークであれば周囲の了解と感染対策のもと、出勤は可能だと思います。
もちろん職種にもよりますので、医療介護、学校関係、飲食業、接客業などは個別の判断が必要かと思います。
手足口病は何回もかかりますか?
手足口病のウイルスは複数あります。
コクサッキーA16に感染して発症して治った方でも、エンテロウイルス71に感染すると再び手足口病になる可能性があります。
自分は以前手足口病になったことがあるから対策しなくても大丈夫、ということはありません。
まとめ
手足口病について概略を説明しました。
【手足口病のポイント】
- 飛沫、便で感染するウイルス性の病気
- 口の中、手足に発疹
- 発熱、風邪様症状をともなうことも
- 潜伏期間3~5日
- 治るまでの日数 おおよそ1週間
- 対症療法
- まれに脳炎、髄膜炎を起こして重篤化する
- 感染力 飛沫は1~2週間 便は3~5週間
- 休む目安 1週間程度(明確な基準なし)
- その他 大人も感染する 複数回かかることがある
さらに簡潔に説明すると以下のようになります。
手足と口に特徴的な発疹が出る『夏カゼ』といっていいでしょう。